障害の歴史:
History of Disabilities: Disabilities in Society, Seventeenth to Twentieth Century
障害の歴史において、障害は障害者個人に起因する異常な状態であり、これを正常な状態へ回復するために医学的治療を施すべき対象であるとみなされてきました。この言説は障害の歴史の中で支配的な思想として長く影響をおよぼしてきましたが、20世紀になると再審に付されるようになります。障害は医学的な現象であるとともに社会的、政治的、文化的現象でもあるとの認識が広まり、健常と障害の区別は自明ではなく、社会的に構築されたものであり、特定の人々を障害者と名指しする社会規範の存在自体に関心が向けられるようになりました。この変化は実践的には障害者の権利拡張運動を通して各種の障害者法制の成立を促す一方で、学問の場で障害研究が人文学の重要な研究分野として確立するのを後押ししました。
本アーカイブは障害を社会的現象とみなす障害研究の進展を受けて、障害者が社会の中で表象され、統制されてきた事情、特定の人々を障害者と名指しする社会的規範の歴史を研究するための新シリーズ「障害の歴史 History of Disabilities」の第1弾として、17世紀から20世紀までの数世紀にわたる障害に関する一次資料を提供するものです。収録資料はニューヨーク医学アカデミーが所蔵する書籍、パンフレット、報告書、個人文書で、総ページ数は53万ページにおよびます。
なお、本アーカイブは他のアーカイブと同様、活字文献についてOCRテキストを生成しフルテキスト検索を実現していますが、本アーカイブ独自の特徴として英語OCRテキストに読み取りエラーがある場合はマニュアルで修正しています。(英語以外のOCRテキスト、また手書き文字認識HTRの生成テキストについては修正をほどこしていません。)
◆注意◆
本アーカイブに収録されている文献には、障害者などに関して、今日では許容されない差別的な表現や主張が含まれています。これらの文献は学術研究や教育目的で提供されるもので、弊社は一切そうした主張に与するものではありません。
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(約42分、字幕・チャプターあり・スライドはこちらから)
《収録コレクション》
ダグラス・C・マクマートリー障害関係文献コレクション
Douglas C. McMurtrie Cripples Collection
ダグラス・クロフォード・マクマートリー(1888-1944)は20世紀前半に活躍したタイポグラファー、書誌学者で、身体障害者と知り合いになったことがきっかけで身体障害に関する雑誌を編集、また身体障害者協会の会長に就任、米国の第一次大戦参戦直後に創設された赤十字身体障害者研究所(Institute for Crippled and Disabled Men)の所長として負傷兵士のためのリハビリテーションセンターを設立し、兵士だけでなくあらゆる障害者(特に児童)の社会復帰に尽力するなど、その名は米国障害史にも刻印されています。本コレクションはマクマートリーが蒐集した障害者やリハビリテーションに関する書籍、パンフレット、報告書等を集めたもので、北米、英国、大英帝国自治領、ヨーロッパ諸国等の地域がカバーされています。大半は英語文献ですが、フランス語やドイツ語等の欧語文献も収録されています。
ニューヨーク医学アカデミー所蔵 障害関係パンフレット集
Pamphlets about Disabilities from the New York Academy of Medicine Library
ニューヨーク医学アカデミーが所蔵する4万冊以上の医療パンフレットコレクションから、障害に関わる2,800冊強の英語パンフレットを選び収録します。これらのパンフレットは現在入手困難であるのはもちろん、これまでも通常の販売チャンネルで流通してこなかったため所蔵している機関は稀です。
ニューヨーク医学アカデミー所蔵 障害関係書籍集
Books about Disabilities from the New York Academy of Medicine Library
本コレクションはニューヨーク医学アカデミーが所蔵する障害に関する約820冊の書籍を収録します。肢体の不自由な人、肢体を切断した人、視覚障害者、聴覚障害者、言語障害者、精神障害者、障害児童等々、様々な類型の障害者に関する書籍が収録されています。書籍の表題からは当時の精神医学界の障害に対する思考や分類法が見えてきます。
チャールズ・ルーミス・デイナ文書集
Charles Loomis Dana Papers, 1876-1932
チャールズ・ルーミス・デイナ(1852-1935)はコーネル医科大学の医師で、ニューヨーク医学アカデミー、ニューヨーク神経学会、米国神経学会の会長を歴任した20世紀前半のニューヨーク医学界の重鎮です。本コレクションはデイナが神経科医師のキャリアの中で残した精神医学、精神疾患、アルコール依存、筆跡、テレパシー、医学史等の主題に関する論文や講演原稿や書籍出版のためのタイプ原稿を収録します。鬱、不安、偏執症、不眠症、早発性認知症、片頭痛、神経衰弱症、精神衰弱、癲癇、側索硬化症、耳鳴り、脳炎、嗜眠性脳炎等の症例が挙げられています。
アレクサンダー・E・マクドナルド文書集
Alexander E. Macdonald Papers, 1865-1906
アレクサンダー・E・マクドナルド(1845-1906)はマンハッタン・ブラックウェル島の慈善病院の医局長、ワーズ島の精神病院の医療部長、ニューヨーク市精神病院(後のマンハッタン病院)の医療部長を歴任する傍ら、ニューヨーク大学の精神医学と医事法の教授を務めたニューヨークの著名な精神科医です。精神科医として、ガーフィールド大統領の暗殺犯チャールズ・ギトー等の刑事裁判でも証言台に立ちました。本コレクションはマクドナルドの著作物や文書を収録します。19世紀後半から20世紀初頭のニューヨーク精神科病院の実情を伝える貴重な資料です。