Testaments to the Holocaust: Documents and Rare Printed Materials from the Wiener Library, London
本コレクションは、ナチスのホロコーストと反ユダヤ主義を実証する資料を収集する最初のアーカイブとして設立されたロンドンのウィーナー・ホロコースト図書館の所蔵資料を収録するものです。ナチスの支配から逃れた人々による目撃情報、ユダヤ人の生活、ナチスの活動、ゲットーや強制収容所を写した写真資料、ナチスがプロパガンダの目的で刊行した出版物、ナチス指導者層の伝記情報のカード式索引(多くは肖像写真付き)のほか、ウィーナー図書館が発行したパンフレット、雑誌も収録されています。
ウィーナー・ホロコースト図書館所蔵資料は、創設者アルフレッド・ウィーナー(ポツダム生まれ)が第一次大戦後、種々の反ユダヤ主義極右団体がドイツに誕生した状況に重大な関心を抱き、ドイツ最大のユダヤ系人権団体であるユダヤ教信徒ドイツ国民中央協会に参加したことに起源があります。ウィーナーはその後、反ユダヤ主義団体の中で最も勢力を伸張しているナチスに関する新聞、雑誌からパンフレット、ビラの類まで、あらゆる資料を収集し、ナチスの脅威を人々に周知させることを試みました。1933年にナチスが政権を獲得すると、中央協会の事務局は閉鎖され、ウィーナーは家族とともにアムステルダムへ亡命、この地でユダヤ中央情報局を創設し、ナチス政権下のドイツでの出来事やユダヤ人の境遇に関する資料の収集と普及の活動を継続します。しかし、オランダ政府からの圧力を受けると、今度は中央情報局をロンドンに移転し、さらに戦争が始まるとウィーナー自身はアメリカに活動の場を移す一方で、ロンドン事務所の運営は自身の右腕のルイス・ブロディに委ねました。ロンドンの事務所が収集した情報はイギリス政府やイギリス放送協会にも提供されました。情報局はナチス占領下のヨーロッパ諸国の実情を伝えるべく、”The Nazis at War” と ”Jewish News” という2つの雑誌を発行しました。
第二次大戦後、情報局は活動範囲を拡大し、名称もウィーナー図書館に改称され、ニュルンベルク裁判での戦争犯罪人訴追への支援、損害賠償の支援からホロコーストの目撃情報の収集、図書館報の発行、セミナーの開催まで、ナチスに関する研究と資料収を行なう機関に発展し、現在にいたっています。ウィーナーの死後、ウォルター・ラカー、デヴィッド・セサラニが館長に就任、現在はベン・バーコウが引き継いでいます。
《収録資料》
1. 目撃資料
個人のユダヤ人への攻撃から、水晶の夜事件でのユダヤ人への大規模な迫害、さらにはポーランドの強制収容所まで、ナチスによるユダヤ人迫害に関する目撃情報を収録します。目撃者へのインタビューに基づくもの、目撃者がウィーナー図書館のために執筆したものから、迫害を受けていた時代の書簡など、総数1,500点以上におよぶ記録が集められています。
2. 写真コレクション
ユダヤ人家族の日常生活、都市の騒擾、インフレによる貧困、ナチスの選挙キャンペーン、演説をするヒトラー、ナチスの迫害、強制収容所、第二次大戦中の難民などを撮影した約4,000枚の写真が収録されています。
3. プロパガンダ資料
フィリップ・シュタウフにより編纂された反ユダヤ主義大全『シギラ・ヴェリ(真理の印章)』、ヒトラー・ユーゲント教育用の書物、挿絵本、パンフレット、ナチ党の暦から、突撃隊、親衛隊、国家社会主義女性同盟らの組織により製作された唱歌集、さらにはナチ党公認の無害なヒトラー諷刺画まで、ナチスのプロパガンダ資料を収録することで、ナチスがその思想の普及と敵対勢力の失墜に努め、ヒトラーの個人崇拝を促した巧妙な手段の数々を明らかにします。
4. ウィーナー図書館刊行物
ドイツとナチス占領地域の状況を伝える出版物や報道記事を抜粋して掲載した雑誌、ユダヤ中央情報局が発行した雑誌 ”The Nazis at War” と ”Jewish News”、戦後、ホロコースト関連の学術的討議の場を提供し、現在も依然としてナチスやユダヤ人迫害、さらには戦後の極右運動に関する重要な資料として活用されているウィーナー図書館の図書館報を収録します。
5. 伝記情報索引
ナチ党や国防軍や突撃隊の幹部の伝記情報を掲載する4,000枚のカード式索引
(マイクロ版タイトル:Testaments to the Holocaust. Series One: Archives of the Wiener Library)
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関連分野
- ユダヤ・ホロコースト研究
- 第二次世界大戦