Dissent in Poland
1982年、戒厳令施行下のポーランドで創設されたKARTAセンターは共産主義体制の下で、非合法の地下出版活動を開始しました。共産主義体制崩壊後の1990年に合法化され、現在に至るまで出版、資料収集、収集資料の電子化、研究、教育等、精力的に活動を行う一方で、第二次大戦中のナチス占領期と第二次大戦後の共産主義体制期におけるポーランドの抵抗運動の歴史を記録する文書館として、資料の収集に努めています。
本アーカイブはKARTAセンターが収集した一次資料から、ポーランドの抵抗運動の歴史に関する以下の3つのコレクションを収録するものです。
※3コレクションごとのご購入が可能です。詳しくはお問い合わせください。
東部アーカイブ[The Eastern Archives]
東部国境地帯から現在のリトアニアの南東部、ベラルーシの西部、ウクライナの西部に跨る旧ポーランド領にかけて、クレスィ(Kresy)としてポーランドの人々によって独自のコノテーションで言及される地域の歴史を復権する試みの一環として収集が進められたものです。主として1930年代から1950年代にかけての個人の回想録や日記を収録します。記録の蒐集を促進するために全国規模のコンペを実施したことも奏功し、多くの個人からの蒐集が実現しました。
抵抗アーカイブ[The Opposition Archives]
3部構成で、第1部は1981年から1983年までの戒厳令施行期の日記を収録します。大半は連帯の活動家のものですが、収監中の活動家やストライキ等の抵抗運動の参加者の日記、さらには兵士や治安当局といった体制側の人物の記録も含まれています。「ポーランド人民共和国期」と題された第2部はソ連によってポーランドが解放された1944年から共産主義体制が崩壊した1989年までの日記や回想録を収録します。「民間の活動(Private Initiative」と題された第3部は共産党指導部から黙認された経済活動、あるいは非合法の闇経済に携わっていた人々の記録を収録するもので、1945年から1989年までの期間をカバーします。
〈連帯〉の誕生[Birth of a Social Movement]
1980年9月の〈連帯 Solidarność〉創設から1981年12月の戒厳令施行までのわずか2年足らずの期間をカバーします。ルブリン、グダニスク、シュチェチン、ヤストシェンビェの各都市の工場や造船所でストライキ委員会が形成された後、各地の工場を横断する形でストライキ委員会が拡大し、最終的に共産党から独立した全国自治連合組織にいたる連帯の初期の歴史を克明に明らかにする資料群です。
連帯創設後、造船所の労働者の運動にカトリッククラブや労働者防衛委員会の知識人や学生が合流し、労働組合運動は共産党独裁体制に対する大衆規模の反体制運動の受け皿となりました。コレクションに含まれる会議録、組織の規約や綱領、パンフレット、書簡、チラシ、ポスター等の多様な資料は、運動に携わった様々な当事者の活動、カトリック教会の運動への関与、ポーランドのカトリック教会とポーランド出身のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の関係、中央集権化を志向する当局と地方分権を志向する労働組合側のせめぎあい、政治改革に向けた連帯の要求、連帯指導部内でのレフ・ワレサの台頭といった状況を明らかにします。
「社会運動の誕生アーカイブ」に含まれる1980年8月のグダニスクのストライキ委員会による21箇条の要求は、ベルリンの壁崩壊に至る東欧民主化運動における転換点を示す歴史的文書として、2003年にユネスコの世界記憶遺産に登録されました。
(マイクロ版タイトル:Dissent in Poland: Publications & Manuscripts from KARTA Center Foundation Archives in Warsaw, Poland)
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関連分野
- 東欧・ロシア研究
- 20世紀研究
- 現代グローバリゼーション史